ディグ 音楽を楽しむこと

先日同僚の方々と渋谷のタワレコにレコードを買いに行ったのですが、その時いらっしゃった新卒の方が僕のオススメしたDr.Johnのアルバムを購入されて、しかし実は普段あまり音楽を聴かないんです、ということで、このままだと年上の圧力で買わされた変な絵のアルバムが手元にあるという構図で、悲しすぎるので、どういう観点でお勧めしたか説明します。


ゴールはこちらです。

音楽を聴く・背景を楽しむ

例えばジョン・ケージ4分33秒という何もしない曲は、4分33秒の間何もしないというだけでも十分シュールで面白いですが、ジョン・ケージがこの曲を作曲するに至った無響室でのエピソードを知ることで、また違う面白さを感じることができます。音楽を聴くにあたっては、曲そのものはもちろん、背景にある文脈を知るという楽しみ方があり、そうして得た知識が音楽を聴くこと自体をさらに楽しくする。そういう風に思っています。

ニューオリンズについて

アメリカ大陸の南東部、つまりアフリカ側に位置する港湾都市であるニューオリンズでは、その地理的な理由から黒人の方々による音楽が発達しました。ジャズの発祥もニューオリンズであると言われています。ジャズ・ブルーズ・ヒップホップといった、一般にブラックミュージックと呼ばれる音楽は多種多様ですが、一つ大きな共通点を持ちます。それはリスナーの身体を揺らしてしまうような強いビート感です。育つ環境や文化によるものなのか、生来のものなのか。ブラックミュージックには黒人の方々が持つ抜群のリズム感が色濃く現れています。

Dr.John

そんなニューオリンズで生まれ、活躍したのがDr.Johnです。キャリアを通してグラミー賞を6度受賞しています。主にピアノとボーカルで、ニューオリンズの伝統的な音楽を演奏します。代表曲はやはり「Iko Iko」でしょうか。これまたニューオーリンズの代表的なフォークソングのカバー曲になります。

この曲ではセカンドラインと呼ばれる、ニューオーリンズの葬儀(!)のパレードのリズムが使われています。 [ 3・3・4・2・4 ] の強拍を感じることができるでしょうか。

そして日本へ

Dr.Johnのアルバム「Gumbo」は発売された1972年の 2, 3年後には日本のミュージシャンへと届き、影響を与え始めました。一番初めに目をつけたのは大瀧詠一で、友人であり元バンドメンバーである細野晴臣にも伝わることになります。

haruomi hosono 1976

「大瀧がDr.ジョンの『ガンボ』を教えてくれたんだよ」
「『すごいレコードが出たよ』って」


Dr.Johnの影響を受けて作られた大瀧詠一のハンドクラッピング・ルンバ。リズムがセカンドラインですね。1975年5月発売のアルバムの曲です。


念のため言及しておくと、大瀧詠一というのはCMでよく使われるこの大ヒット曲の人です。


対する細野晴臣。曲名にGumboと入っています。ニューオリンズ的なリズムと沖縄(琉球)のリズムが混じった不思議な曲です。こちらは1976年7月発売。

そして現代へ

アフリカからアメリカ、そして太平洋を渡ってきた音楽の影響は、現代の日本にまで続きます。

細野晴臣からの影響を公言する星野源ですが、きっとそれゆえなのでしょう。イントロのセカンドラインをお楽しみください。


ところでディグってなに?

  • 音楽の背景にある 時代・地理・文化・人 の関係を紐解くこと
  • Web上での情報収集とは違った、偶発的な出会いを求めてレコード屋に赴くこと

というところでいかがでしょうか。